ものもらい(麦粒腫)を治す

今回のテーマは「ものもらい(麦粒腫)」です。私も小さい頃にはよくできていました。目の周りで炎症が起きて大変ですよね。一度成りかけると「あんまり触っちゃいけない」とか言われて、でもやっぱり気になって触るともっと炎症がキツくなったりしてよく怒られた記憶があります。鍼灸学校で経穴の授業で「ここにお灸するとものもらいは治る」と教えてもらい、こんなこと知っていたら昔苦労しなかったななんて思ったものです。そのここというツボは「温ル(大腸経)」のツボです。鍼灸学校の時分はものもらいはもうできなかったので使うことも少なかったです。大師はり灸療院では「手三里」これも大腸経ですが ここがよく効くと教えてもらいました。どっちでも効けばいいんですけど・・・。

先日肩こり患者さんが「昨日目に埃が入った、それから左目を開ける時違和感がある。」とのこと。左右の目を開けてもらい診てみると左目が充血している。患側左側の手三里の反応を見ると明らかに右の三里とは違う。取りあえず手三里にお灸を据える。次にベッドに寝かせたまま頭側から患者さんを診てみると左まぶたが腫れている感じ。患者さんにこのことを伝えると患者さんもそんな気がすると云う。左目周囲を触診していくと左目外方が張っている。そこで鍼を目の内側(晴明)、外側(瞳子リョウ)にする。といっても目の周りの皮膚は柔らかくまかり間違ってパンダさんになっても困るのでセイリン製のすごく細い鍼(J15タイプ03)で刺入。細いので鍼の痛みなど無し。少しの時間置針する。鍼を抜いた後、「左目の感じどう?」と訊くと「目を開けるのに違和感なし」ものもらいの治療はうまくいったかなという感じです。

今回はものもらい(麦粒腫)のなる前だったように思います。鍼灸の良いところは 「なる前でも治せるところ」最近よく聞く「未病を治す」ということ。結果 患者さんが良くなればいいんです。

顎関節症の治療について

 最近「顎関節症」という言葉をよく耳にしますね。やはり鍼灸院にも通って来られることも多いようです。何したわけでもないのに急に顎の状態が悪くなる、例えば口を開けづらくなったり口を開ける時カクカクと音が鳴ったりして、エッ何でと思ったりします。顎関節症だと口腔外科に行ったりするのかな。一般に、顎運動障害、顎関節痛や関節雑音が単独もしくは複数合併して発現する(これを顎関節症の主要3症状と呼ぶ)。疼痛は主に顎運動時に生じるといわれています。
 何年も前になりますが私も衝撃的に・・・。朝食を摂ろうとしていた時口が開かない。どうしたんだ!となったことがあります。前々から口を開けるとカクカクと音が鳴っていたのですが 目の前の食事が摂れないショック。もう口は開かないの、どうしよう。取りあえず大きく口は開かないのでスプーンで流し込むように食事を摂取。あとは鍼灸師なのでどこかに治せるツボがないか試行錯誤。顔の事なのでやはり首かな。ア門穴(首の盆のくぼにあります)の少し下辺りを親指で押してそのまま首を後に倒してまた首を元に戻してみて口を開けると違和感なく開いた。やっぱり顎関節症の治療穴は首にあると実感したのでした。

 さて先日常連の患者さん、肩こりとか腰痛とかがいつもの主訴。この日は「先生、口を開ける時ここの辺り痛いんです。(下顎骨)」左右比べてみるとやはり違う。「うん顎関節症かな。じゃあ今日はこの治療もしとこう」と答えて治療をしていて「先生!顎関節は?この辺りに鍼しないの?」と訊かれ「いや顔はやめとく、首にするよ首。もう一回うつむきで寝てみて。」そして首の一点一穴に鍼をしました。「鍼が痛かったら言ってね、少し入れるから。」1cmくらい入れたと思います。「それが開けると痛いところ(下顎骨)にピーンときた。」「はい口開けてみて。」「アッ口開けても大丈夫、痛くない。悪いのは首だったんですね。」「はい、そうです。」

首が凝るとか首が悪い(むち打ちなど)といろいろな症状が出るんですよ。解決方法はじゅうぶんな睡眠でしょうね。

咳は風邪からとは限らない

今回のテーマは「咳」です。咳というと思い浮かべるのが「風邪」ですが、風邪じゃなくとも咳がたくさん出ることだってあるんです。小児ぜんそくとも違うんです。

7月12日、この日は二か月に一度行われる臨床家育成会の日でした。臨床家育成会というのは読んで字のごとく鍼灸師を育成する講習会、鍼灸師になるべく国家試験は合格するものの いざ臨床で患者さん相手に施術となるとそううまくいかない。そんなことが無いよう実技重視の講習会なんです。
今回のテーマは「刺絡」三稜針という鍼を使って患者さんを施術していく。ホームページを見ていただくとわかりますが、三稜針で皮膚を切った後、吸玉をしていく治療なんです。午前中 刺絡の座学を行った後、午後からは実技開始。今回は森ノ宮医療大学の1年生が見学に4名。そのうちの2名が鍼灸の実技のモデルになってくれました。私のモデル患者の彼、症状は「咳」。もう2ヶ月もでてるらしい。あまりにも治らなくてお医者さんに行って薬を飲んでいるけど一向に変化なし。この「咳」どうかしてください!というのが主訴。問診しているとすぐにピンときました。「腹からくる咳」だと。
この「腹からくる咳」には特徴があります。まず本人の風邪の自覚なし。咳は出始めると比較的続けて出ます。続けて出てむせるくらい出ます、キツイ時は胃の内容物をもどします。これらを患者さんに尋ね該当しているとビンゴです。今回もこれらの質問をしましたがすべてビンゴでした。

「腹からの咳」といっているように胃腸の治療が主体です。間違っても風邪の治療では治りません。
一番わかり易いのは仰向けに寝かせてお腹を診る。大師流でいう腹部打診をすると大抵鳩尾(みぞおち)付近でポンポンとガスの音がする。このガスを下方にもってくると咳は治まってきます。
この患者さんは咳の症状がきつく下向きに寝るだけでも咳が酷くなる。仕方がないので取りあえず足三里と、上巨虚穴に鍼をします。この足の三里は胃に上巨虚は腸に効きます。この患者さんは三稜針が合う身体なので三稜針でポンポンとツボを叩くとそれだけで咳が減り「楽~」て感じ。それでもって下向きに寝てもらったけど咳は出ず。それから胃の治療、腸の治療でツボに三稜針をポンポンと打つがどれも気持ちいい~。もう一度上向きになり腹部打診をするが鳩尾のガスは下がっている。
患者さん「もっと早く鍼灸すれば良かった」と大感動。いい講習会のモデルでした。今回の三稜針は鍼の先を丸めてあるので皮膚を切ることなくもちろん出血も見ない。ものの15分くらいの出来事でした。

お題の通り「咳は風邪からとは限らない」ということです。これから足元がクーラーなどで冷える季節、お腹のガスは鳩尾に集まりがちです。足元は温かくしてください。
ブログ「体調が悪いのはガスのせい」も一緒に読むとよりガスの事がわかり奥が深まりますよ。

顔面の症状には首の治療が大事

今回のテーマは「顔面の症状」です。顔面の症状?何それって感じですが、私の言う顔面の症状は鼻・耳・目・口の症状です。例えば鼻炎であったり、目がショボショボしたり、耳鳴りがしたり、歯茎が浮いたりといった諸症状のこと。今までの臨床経験上ポイントは首のコリです。症状によって首でもこる位置が微妙に違うのですが大まかにいえば首のコリです。首のコリがとれれば気になっている愁訴はとれます。顔面の症状はその人の一番弱いところ、それは鼻であったり、耳であったりします。多分凝ってくるとこんな症状が出るってだいたい決まっていますから。

前の職場で私がずっと診ている患者さんがいました。その患者さんは「いつも首が気になる」とか「首のここに大きいやいとしてください」とか首に関してよく訴えていました。(その処はア門穴)その頃駆け出しのころで首を触っても何にもわからずただ患者さんの言われるがままにしていましたが、患者さんの言う通りにすると満足されるのでした。だんだんと言われるがままというのも嫌になり自分でどこが悪いか見つけてやろうと思い色々と触るとその患者さん、そこは目に効くとかそこは鼻にくっついている何かが取れる感じとか色々と感じたままに言ってくれるんです。その時に思ったのは「首は顔面の症状と関係がある」ということでした。その患者さんにはそういう面で色々と教えていただき良い勉強ができました。それから色々な患者さんを治療する際「先生、なんでこんな風になるんですか?」と問われることも多いですがその時の経験で「首のコリです。首のコリが取れたら症状も取れますよ。」とハッキリと言うことができます。

そうそう首のコリですが、その患者さんその頃で60歳は越えていたと思うのですが、白髪の女性の方でした。1週間に1回私が治療していました。前述している通り首をしっかり治療している(他の処もしっかりとしていますが・・)と首のところから後頭部にかけてだんだんと白髪から黒髪に変化していきました。患者さんがびっくりされていたことが思い出されます。
ついでながら首の治療を行うと「小顔効果」も期待できます。首の付け根(上天柱穴・後頭部あたり)が凝って血液循環がわるくなると顔のむくみがでてきます。首のコリをとると血液循環がよくなりむくみが無くなるつまり小顔。もちろん首のコリをとると各症状が改善できる。まさに一石二鳥です。鍼灸うえだでは 美容針はしませんが、首のコリをとることは治療上しているので「小顔」にもなれると思います。

顔面の症状 色々ありますが もしかしたら首のコリが原因かもしれませんよ。

「健全な肉体に健全な精神は宿る」という言葉

「健全な肉体に健全な精神は宿る」という言葉を私は大切にしています。この言葉、鍼灸学校1年の時に衛生学で習った言葉。授業の時は ヘェ~そうなんだ くらいしか思っていなかったけど鍼灸の臨床をしているとこの言葉の意味が分かってきます。病んでいる患者さんがだんだんと良くなっていくと考えも前向きになりやる気も出てくる。連鎖反応で身体の方ももっと良くなって来て・・・と良い循環ができてきて心も身体も良くなってくる。やっぱり心と身体は切り離せないものなんですね。病は色々あります。治し方も色々です。我々鍼灸師ができることは身体を治すこと、でもただ身体を治すのではなく、身体を治すことによって精神(心)も治すことができるのです。私はこの「健全な肉体に健全な精神は宿る」という言葉を支えに患者さんを治療することはよくあります。

うつ病やパニック障害の患者さんにはこの言葉を伝えます。健全な肉体になることが症状を治すことだと伝えます。
現在うつ病の患者さんが来院されていますが鍼灸治療を始めてだんだんと日常生活に変化が現れたようです。何もできずに一日過ごされていた毎日に少しずつ何かやれる、やりたくなるようになるみたいです。

そうそう以前お母さんが自分の子供をタンスに押し込めて子供が亡くなったという事件の報道を見ました。親が自分の子をタンスに押し込めるなんて・・ありえない と思っていましたが、考え方を変えて もしお母さんが疲れていたら?おかあさんが体調が悪かったら? やはり健全な精神ではいられなかったのではと思ってしまいます。誰も知り合いの無い都会でずっと赤ちゃんと一緒。赤ちゃんはお腹が空いたで泣くし おむつが汚れたで泣くし、お母さんも疲労でまともな精神状態ではなかったのかも。

身体を治すのが私の仕事、「健全な肉体に健全な精神は宿る」と信じて治療します。
今回は日常的に患者さんに言っている言葉を取り上げてみました。

目の周りがピクピクする、これって鍼灸で治る?

患者さんから「右目の辺りがピクピクと痙攣する。なんか顔面麻痺になるんかな~」なんてよく言われます。多分顔面麻痺にはならないでしょうけど、やっぱり気持ち悪いですよね。
今回はその「顔のピクピク」についてです。きちんとした症状名を知らないので「顔のピクピク」と呼びます。私の経験からすると首のコリです。首のコリをとると嘘のように症状は無くなります。筋肉を動かすのに電気信号で伝えるのですがそれが異常に伝達してしまうことが原因のようです。筋肉の異常興奮というんだそうです。だから首がコリ過ぎると異常伝達してしまうということですね。よくあるのは片側の目の周りがピクピクする、私はたまに口角辺りが痺れる、これも首のコリだと思うんですが・・・。もちろん治療すれば症状は無くなります。じゃあ何処に鍼をすればいいかというと以前はツボでいうと患側の上天柱(かみてんちゅう)なんかが良かったのですが、最近の症例では上天柱よりもっと頭の中、後頭隆起の中にあります。上天柱からずっと後頭隆起を上がっていけば触診すると気になる点に辿り着きます。そこに鍼をすると一発で「目の周りのピクピク」は治まります。頭の鍼を勉強しに行ってから頭を使うことが多くなりましたがよく効く場所です。私の経験ですは目の周りに鍼をするより有効だと思います。

目の周りが気になる方は一度お試しあれ。

膝が痛いの膝が悪いから?

4月に入り一段と温かくなりましたね。桜もこの辺りは7分咲き、つい散歩などしたくなります。でも散歩行きたいのに、膝が痛いとついおっくうになってしまいます。今回のテーマは「膝痛」。

世の中には膝の悪い人はたくさんいて街では痛そうに歩かれる姿をよく目にします。職業柄気になるのか具合の悪い方に目がいってしまいますね。膝が痛いと言っても色々あります。膝の内側辺りが腫れてくる、変形性膝関節症。見ただけで痛そう。膝に炎症があるんですね。だんだんと変形してきて O(おー)脚とかX(えっくす)脚になってくると膝の関節が負担になって炎症が起きてきますね。これも鍼灸すれば炎症が治まると水も溜まりにくくなり痛みが減ってきます。でも今回の「膝痛」は変形性ではないんです。

変形性でなくてってことは見た目普通。どこが悪いのって感じだけど痛みがある。例えば階段昇る時なんか痛い。でもよく痛くなるのって階段降りの時片一方の足に全体重と重力が掛かる時が一番だと思いますけど。階段昇る時なんて自分で体重移動を考えながらできるので降りとはちと違う。来院された患者さんは動かしたときに膝が痛いもんだから「先生、膝が痛い。」なんてよく言われます。痛みが出る状況を問診し「え~これって膝が悪いんじゃ無いんじゃない。腰よ、腰」ということが多いです。最近では「先生、腰ですよね。」なんて患者さんから言ったりして。

 膝を床に付ける、立膝をすると痛いという患者さんがいて年末に電話が掛かってきて「先生どこ悪いの?」「それは腰よ。腰」と返答すると納得いかない。「じゃあ、整形外科でレントゲンでも撮ってもらって何ともなかったらおいで。」とお答えしました。案の定「整形外科では何ともないと言われた。でも痛い。」と来院されました。
「じゃあ、気になるから先に膝の治療しとく?」とベッドにうつむきで寝かせ、腰に鍼をしました。膝に関係する場所があるんですね。鍼は2~3本患者さんに刺しました。鍼を抜き「一回痛い格好してみて。」と患者さんに言うといろいろと動かしてみて「わー痛くない。」と感動。「やっぱり腰やったんや。」

もうひとつ、前の職場では「走る先生」が来院されたことがありました。やはり膝が痛くて走れなくなったそうです。その時も膝そのものではなく腰だと判断し治療しました。まだ勉強不足の頃でしたが、腰椎の正中部位に鍼をしていくとだんだんと走る時に痛みがなくなるとのことでした。計5回くらいの治療でしたが、本当に良くなられたのでしょう、治療後すぐのマラソン大会で優勝されたとのこと、あんまりうれしくて治療院にお礼の電話がありました。私も大変うれしかったことを覚えています。

鍼灸の妙は痛む部位がイコール治療場所ではないということです。なかなか難しいですがそういうツボを見つけて早く症状が良くなると患者さんは感動されます。もちろん治療者もですが・・。
膝が痛いのは膝が悪いから?膝が悪いからって膝に湿布貼っていれば治るってものではないんですね。

手が冷たいって気になるよね

私は鍼灸師ですが、患者さんを触診をする手前、手が冷たいっていうのは凄く気にします。まだまだひよっこの頃は手が温まらず冷たい手で患者さんを触り嫌な思いをさせた記憶があります。だんだんとこの仕事の歴史が長くなると勝手に手が温かくなってくれます。あんまり手が冷たいことを気にしなくよくなるものだと自分の体験から思っています。

今回の患者さんは「手が冷たい」と言われる作業療法士の女性。仕事歴も長いので前述の話では手が冷たいなんて無縁なこと。「2,3年前より手が冷たい、もちろん仕事の際にも気を使う」とのこと。触るとホントに冷たい。こりゃ大変だ。今まで温かったらしく2、3年前からだから・・。原因は2つ。ひとつは肩・首・ついでに肩甲骨あたりの凝り。これが手に対して血液循環を阻害している。もうひとつは胃腸の働きが落ちている。胃腸の働きが悪いと身体は内臓に血液をまわすので末端の手足は血液の循環が悪くなり冷たくなるのです。この二つを説明し、いざ治療!首・肩の治療で少し右手が温かくなってきた。肩甲骨内を治療すると右手はポカポカするらしい。ホントかなと思って触らせてもらうとさっきとは全然違う。この患者さん首・肩・肩甲骨周りがよく凝っていたのと、やはり胃腸の働きが悪かったようです。治療が終わる頃には手がポカポカ、鍼灸が初めての患者さんだったのでこんなに即効性があることに衝撃的だったようです。

鍼灸は「痛くない・熱くない」ものです。いやいや「気持ちのいいもの」です。この患者さんのように鍼灸に良い印象を持っていただくと業界人として幸せですね。

これって胸郭出口症候群?

 胸郭出口症候群、鍼灸学校で1年生の時ならった、ライトテストとかするやつ。もう20年以上も前のことなのでうろ覚えで思い出すのがやっとという状態。「肩や腕が痛む、それだけでなくだるさ痺れを伴い手がむくむ、冷えるといった血液循環障害がある」といった症状かな。

今回は整形外科でその胸郭出口症候群と診断された患者さん。お仕事は設計の仕事で細かい作業が多い。仕事を一生懸命していたら手が痺れてきた。診察してもらうと「胸郭出口症候群」と診断された。でも色々あって治療には至ってないらしい。前述したとおり症状がうろ覚えだったので「どんな感じ?」と尋ねると「座って手に力を入れると入るんですが、立つと手に力が入らなくなるんです。」とのこと。エッ胸郭出口ってそんな感じだったけ。少なくとも手は挙げてないぞ。それにその姿勢の変化は上半身はあんまり変わっていない。どういうこと?と頭の中でグルグルと「はてな」マークが出てくる。それって胸郭出口じゃないんじゃないの。じゃあどこが悪いの?エ~どうしよ。と少し焦り気味。問診が終わり触診。とりあえず前腕を触ってみる。何でこんなに硬いんだ。「今日何か持った?重いもの」「いいえ」「ずいぶん前腕硬いよね、いつもこんなん?」「はいそうです。」奥さんも一緒に来院だったので奥さんにも訊いてみたら「いつもこんなんです、たまにマッサージするけど柔らかくならないんです。」前腕の筋肉の奥の方がカチカチ、これなら血液循環悪いかな、これを柔らかくするとマシになるかなという感じで肩・首の治療を始めた。皮膚が硬いので三稜針を使うのだが、出血をみるほどではないので中くらいの三稜針いわゆる中三でパカパカと肩・首を打つ。この患者さんは鍼灸初めてなので鍼灸のイメージを悪くしないようなおかつ効果を出さないと!!
中三で打っていくとだんだんと首肩が柔らかくなっていく。ついでに前腕を触診すると明らかに先程と違う。柔らかくなっている。患者さんに「今 手の感じどう?」「何か軽いです」「じゃあ立って手に力を入れてみてよ。」「先生 力はいます。」「良かったね。」というような会話が続きました。手にはまだ鍼もしていない状態でしたが、首肩の治療で変化があったようです。

患者さんは痛い処を訴えますが、痛い処と治療する処は違うことも多いです。基本的に手は頸椎や胸椎、足は腰が根っこです。枝葉ばかりを見ていないで根っこを治さないと症状は完治しません。
前述の患者さんはまだ初回なのでまだどうなるかわかりませんが、喜んでお帰りになりました。
私も昔の教科書を見直そうと思った1症例でした。でも鍼灸って不思議ですね。

帯状疱疹には鍼灸を。

今回のお話は「帯状疱疹」、よくヘルペスと言われていますね。帯状疱疹には是非鍼灸で治療して欲しいのです。なぜかと言いますと・・・。まず帯状疱疹のおさらいからしましょう。子供の時に大抵の人は水疱瘡にかかります。水疱瘡自体は治りますがそのウイルスは身体に残ったままなのです。そのウイルスが三叉神経や脊髄神経の知覚神経節に潜伏しています。普段では何にも起こらないのですが、ストレスや過労などで身体が弱った時に活動を始め、神経に伝わって皮膚に現れ炎症を起こします。これが帯状疱疹です。神経に沿って現れるので帯状に出てくる疱疹なので「帯状疱疹」。
日頃から良い睡眠を摂っている、疲れをとっていると帯状疱疹になることなんてまずありません。あんまりお疲れ様にならないでくださいね、3月は決算が多いし・・・。鍼灸治療は鍼やお灸をすることで全身の血行を良くして日々の疲れもとってくれます。つまり鍼灸をしていると「帯状疱疹」にはかかりにくいということですね。あと鍼灸治療は痛みにとても有効であるということ、まして神経痛などは鍼灸治療の適応のど真ん中です。「帯状疱疹」は水疱が治った後も神経痛だけが残ります。鍼灸治療で帯状疱疹を治療するとあとの神経痛も一緒に治療できるのです。以前大師はり灸療院で仕事をしていた時 5年前に「帯状疱疹」になった、その後の神経痛がピリピリすると来院された患者さんがいます。治療後は少しマシなんだけどピリピリはスッキリとは取れなかったように伺いました。

今回の患者さん、もちろん「帯状疱疹」です。年齢は10歳。こんなの初めて。10歳なので取りあえず小児はりで全身の疲れをとるように治療。次に帯状疱疹に向けて更なる治療。水疱は左の腹部にある。水疱には触れず肋間神経に沿って小児はり。あとテイ鍼を使って胸椎左際を圧鍼。あとは早めに就寝するように指示。10歳でも帯状疱疹になるんだ~と言うのがめちゃくちゃ印象的。

そうそう昨年の秋に臨床家育成会のメンバーと治療大会をしてた時、一人のメンバーに左脇に水疱らしきものが・・・。「ヘルペス?」と一瞬よぎったので水疱らしきものをしっかりと確認。確認の目的はたまに「虫刺され」があるんです。ただ「虫刺され」の場合は刺された跡が2個付いていることが多いんです。確認したけど「虫刺され」ぽくないので、とりあえず「帯状疱疹」疑惑のまま帯状疱疹の治療をしました。後日に本人より「治療の後すぐ水疱はなくなった、その後の神経痛様の痛みもない」と報告を受けました。ヘルペス?虫刺され?疑惑は残りますがあと何もなければその時の治療は無駄ではなかったと思っています。

先に書いたように疲れを溜めこむと帯状疱疹になりやすいです。やはり疲れたなと感じた時は早めの就寝もしくは早めの鍼灸治療をお勧めします。