今回のテーマは「咳」です。咳というと思い浮かべるのが「風邪」ですが、風邪じゃなくとも咳がたくさん出ることだってあるんです。小児ぜんそくとも違うんです。
7月12日、この日は二か月に一度行われる臨床家育成会の日でした。臨床家育成会というのは読んで字のごとく鍼灸師を育成する講習会、鍼灸師になるべく国家試験は合格するものの いざ臨床で患者さん相手に施術となるとそううまくいかない。そんなことが無いよう実技重視の講習会なんです。
今回のテーマは「刺絡」三稜針という鍼を使って患者さんを施術していく。ホームページを見ていただくとわかりますが、三稜針で皮膚を切った後、吸玉をしていく治療なんです。午前中 刺絡の座学を行った後、午後からは実技開始。今回は森ノ宮医療大学の1年生が見学に4名。そのうちの2名が鍼灸の実技のモデルになってくれました。私のモデル患者の彼、症状は「咳」。もう2ヶ月もでてるらしい。あまりにも治らなくてお医者さんに行って薬を飲んでいるけど一向に変化なし。この「咳」どうかしてください!というのが主訴。問診しているとすぐにピンときました。「腹からくる咳」だと。
この「腹からくる咳」には特徴があります。まず本人の風邪の自覚なし。咳は出始めると比較的続けて出ます。続けて出てむせるくらい出ます、キツイ時は胃の内容物をもどします。これらを患者さんに尋ね該当しているとビンゴです。今回もこれらの質問をしましたがすべてビンゴでした。
「腹からの咳」といっているように胃腸の治療が主体です。間違っても風邪の治療では治りません。
一番わかり易いのは仰向けに寝かせてお腹を診る。大師流でいう腹部打診をすると大抵鳩尾(みぞおち)付近でポンポンとガスの音がする。このガスを下方にもってくると咳は治まってきます。
この患者さんは咳の症状がきつく下向きに寝るだけでも咳が酷くなる。仕方がないので取りあえず足三里と、上巨虚穴に鍼をします。この足の三里は胃に上巨虚は腸に効きます。この患者さんは三稜針が合う身体なので三稜針でポンポンとツボを叩くとそれだけで咳が減り「楽~」て感じ。それでもって下向きに寝てもらったけど咳は出ず。それから胃の治療、腸の治療でツボに三稜針をポンポンと打つがどれも気持ちいい~。もう一度上向きになり腹部打診をするが鳩尾のガスは下がっている。
患者さん「もっと早く鍼灸すれば良かった」と大感動。いい講習会のモデルでした。今回の三稜針は鍼の先を丸めてあるので皮膚を切ることなくもちろん出血も見ない。ものの15分くらいの出来事でした。
お題の通り「咳は風邪からとは限らない」ということです。これから足元がクーラーなどで冷える季節、お腹のガスは鳩尾に集まりがちです。足元は温かくしてください。
ブログ「体調が悪いのはガスのせい」も一緒に読むとよりガスの事がわかり奥が深まりますよ。