よく「鍼があわないから」とか「鍼があわない人がいるよね」なんて話がよく出ています。鍼が合わない?どういうことだろう。鍼を刺されるのが痛いから、鍼をしてもらったけど効果がないから ということなのかと考えてしまします。ホームページ内にも書いていますが、鍼があわないということはないと思います。ただ鍼と言っても本当はたくさんあるんです。古代九鍼といって9種類の鍼もあります。刺す鍼・切る鍼・なでる鍼・押さえる鍼などさまざまです。多分皆さんが知っている鍼は刺す鍼です。鍼灸学校でも刺す鍼を中心に習います。それも刺すことが基本です。ですから鍼灸院では刺して当たり前です。刺さないということが異常なのです。でも十人十色というように本当は鍼を刺していい人と刺さない方がいい人といるんです。また刺す鍼ではなく切る鍼がよく合う人もいます。それを見極めることができれば「鍼があわない」といった言葉が一人歩きしないと思うのですが・・・・。
鍼灸うえだでは患者さんや症状によって鍼を使い分けます。刺す鍼を毫鍼といいます。切る鍼を三稜針といいます。あと鍉鍼といって刺さずにツボに押し当てるだけといったのもあります。鍼灸うえだの治療を参考にお話をすすめます。
70代男性 首や肩の凝りと右肩関節がだるくて車のハンドルも持っていられないといった症状でした。その患者さんは当院の患者さんの紹介で来院されました。来院するとすぐに「鍼は怖い、体の中に鍼が入っていく感じが嫌だ。それに鍼したからといって変わらなかった」と言われました。患者さんの皮膚を触ると刺す鍼はあわないと思い、切る鍼をしました。すると患者さんはこれだったら鍼を受けられると喜んで受けていただきました。ベッドで寝ると治療の間ずっと寝ておられます。もちろん症状も3回の治療で消失です。鍼を替えることによって患者さんの受け方も効果も違うんですね。この患者さんは刺す鍼より切る鍼が正解ということ。
この方も70代男性、腰痛 配送業で腰が痛いけど休めない。この患者さんは刺す鍼 毫鍼が向くと思いました。鍼の太さは2番鍼を使用。鍼灸うえだでは基本2番鍼を使います。初回治療後「だいぶ楽になった」とお帰りになりました。3日後来院され「腰が痛い」と言われ刺す鍼が悪かったのか 今回は切る鍼とばかりに三稜針で皮膚を切り吸い玉をしました。案の定ドロッとした血液が出てきてこれで良くなるかなと思っていましたが全く変化なし。腰痛にはある程度自信があったのですごくへこみました。それでも患者さんは来ていただき今度は刺す鍼の太いやつ5番鍼を使いました。すると今まで鍼について無言だった患者さんが「先生効いているよそれ」と言い始めたのです。自信を取り戻した私はここぞと思うところにその太い鍼を刺しました。そうすると患者さんもだんだんと良くなっていったのです。でもさすがに初めての患者さんに太い5番鍼は使えない。私から見たら針金みたいですからね。初回の選択は間違っていなくても2回目に5番鍼を使うともっと早く良くなっていたのではと反省です。
上記の二人の患者さんからわかるようその人にあった鍼 ーそれは刺す鍼なのかそれとも切る鍼なのかー といった選択肢とどのくらいの刺激をしたらいいのか ー細い鍼がいいのか太い鍼がいいのか 1センチ刺すのがいいのか5センチ刺すのがいいのかー といったことで 「鍼があわない」といったことは患者さんから言われなくなると思います。
なかなか患者さんに治療をあわすのって難しいですね。手ごわい患者さんでした。鍼灸うえだでは手ごわい患者さん募集中です。