鍼灸治療は鍼灸院の数だけ治療法が違うと云われます。同じ屋根の下、同じ流派で治療していたとしても同じことはできません。使うツボが微妙に違っていたり鍼の深さが違ったりで治療効果も違ってきますし、患者さんの受けた感じも異なります。なかなか奥が深いですね。
私はよく本屋さんに行きますが必ず東洋医学系の本が置いてあるところに行きます。どんな本が置いてあるのか、一般の方にどのようにはり灸を紹介しているのか興味があります。よくこの症状にはこのツボなんて本があります。私も読んでいて「こんなところが効くんだ~。」なんて読むこともしばしば。その一方で「本の通りツボを刺激したけど変化なかった!。」ということもよくきく話です。何が違うんだ!簡単にいうとそのツボが身体を変化させるスイッチになりうるかということ。押しても撫でても何も感じ無いようなツボはダメってことです。
私は20年以上大師流という治療法をしています。この治療こそ「はり灸は皮膚にアプローチするもの」といったものでしょう。鍼をする処は皮膚の過緊張部位、お灸する処は冷えのある処・湿った処。本当に気持ちの良い治療ができる、もちろん鍼刺激・灸刺激は患者さんにあった刺激ができないといけませんが・・・。
先日腰痛の患者さんが来院しました。いつもは三稜針(切る鍼で吸い玉)をしています。この日どうもいつもと皮膚の感じが違う。それもそのはず1週間前にも治療していました。でも今回は三稜針の皮膚ではない。患者さんに尋ねても三稜針は痛く感じるらしい。今日は毫鍼で挑戦とばかりに腰の治療を毫鍼にて治療しました。8割方良くなったかなと思い患者さんに痛みが出る動きをして改善をみてもらう。患者さんにみてもらう前私には気になるところがありました。それは腰のそこだけが湿っている感じ、すごく変な感じでした。今まで触診していても感じなかったのに・・・。案の定、患者さんは私が気になっているあたりの動きが悪い、痛みを感じると訴えました。もう一度うつむきに寝かせその部分にお灸。その患者いつもは皮膚が乾いているのでお灸はあまりしない。今日は特別だからお灸するとばかりに7壮ばかり据えたのでした。皮膚の湿りがなくなり気になる感じもなくなりもう一度身体を動かす再チャレンジ。すると全然痛くない、動きスムーズとのこと。今更ながらはり灸は皮膚にアプローチするものと実感したのでした。素直に触診して素直に感じ素直に考えることが大切と思った症例でした。